neomusha

ゲームとテックを、ぶった斬る。

バルーンファイト

── 1985年、空のロマンと友情破壊 ──

PROLOGUE // 星空のサバイバル

それはファミコン世代を生きた人ならその名を知らぬ者は居ないと言うほど有名なソフトです。

星が輝く夜空の上で繰り広げられる壮絶な空中戦。敵味方入り乱れての生き残りを掛けたサバイバルにおいて、装備品はあろうことか唯の風船のみ・・・。

最新鋭のステルス戦闘機でもミサイルでもなく、ドンキホーテで売ってそうなゴム風船。この圧倒的な装備の薄さが、男たちの生存本能を狂わせる。

夜空では雷が鳴り響き、地上にある池には人食いナマズが待ち受けて居るにも関らず、己の命綱は風船だけといったスペランカー君もビックりな命知らずな野郎共が繰り広げるドッグファイト。

そのひたすら敵の風船を割り続けるといったシンプルなルールにも関らず、極限までに淘汰されたゲームバランスと独特の浮遊感は、今なお多くのファンの心をがっちりキャッチして放しません。

バルーンファイト

バルーンファイト(1985年1月22日 任天堂)

バルーンファイト(1985年1月22日 任天堂)

THE HERO // 風船男の狂気

風船男

彼がこのゲームの主人公です。
名前が無いので『風船男』とでも呼んでおきましょう。

既に風船をぶら下げてやる気満々ですね。

彼の瞳にストイックさを感じます。

でもよくよく見ると──

拡大 ×3

拡大 ×3

頭に風船付けちゃってます

風を捉えるのではなく己の脳天を捉える。構造力学への宣戦布告である。

これは非常に危険ですよ・・・。
何故ならこの様な風船の付け方で飛行すると、首だけで自分の全体重を支えなければならないからです。

普通なら頭では無く、背中に背負うのが正解

普通なら頭では無く、背中に背負うのが正解

もしこの様な状態で無理矢理飛び立とうとしても

いきなり首だけ飛んでいったり

いきなり首だけ飛んでいったり
─ デュラハンもびっくりのセルフ・デカピテーション(自己斬首) ─

飛べても即効窒息して自滅したり

飛べても即効窒息して自滅したり

運が良くても首長族になってしまう恐れが有ります

運が良くても首長族になってしまう恐れが有ります

首が異様に強いんでしょうかこの男?
きっと毎日首を鍛えてるんでしょうね。

日夜ブリッジでタイソン並に首を鍛える風船男(想像図)

日夜ブリッジでタイソン並に首を鍛える風船男(想像図)

マイク・タイソンも真っ青のネックスプリング特訓。大空を舞うための努力の方向性が完全に格闘技のそれである。

PROPULSION // 驚愕の推進システム

そしてこの風船男は、そのような猛特訓の末、威風堂々と風船を頭に付けて飛び立てる訳ですが
なんとその動力はです。

決して屁をこいた訳では有りません

決して屁をこいた訳では有りません

・・・完全に空を舐めてますこの男

両腕をパタパタさせることで揚力を得る。レオナルド・ダ・ヴィンチも匙を投げるであろう非科学的な推進システム。だが彼は飛ぶのだ。狂気と腕力だけで。

己の無知さも知らず、地上でもコミカルに動く風船男

己の無知さも知らず、地上でもコミカルに動く風船男

ENEMIES // 謎の鳥人間集団

そんな無謀な主人公を迎え撃つのが、こちらも頭に風船を付け、鳥か人間かどっちつかない中途半端な格好で夜空を徘徊するまったく持って意味不明な連連、「謎の鳥人間集団」です。

雑魚のピンク

中途半端な緑

一番厄介な肌色

こいつらは風船男に何の恨みがあるのか知りませんが、主人公が視界に入るや否やいきなり襲ってきやがります。

色彩心理学も真っ青のカラーコンビネーション。特に肌色の鳥人間が放つ絶妙な不気味さは、暗闇で出くわしたら間違いなく悲鳴を上げるレベルである。

相手の上を取ったほうの勝ち

相手の上を取ったほうの勝ち

そして鳥人間に風船をすべて割られると、当然ながら風船男は落下してしまいます。

最後まであがく風船男

最後まであがく風船男

かなり無様です・・・

「命」

・・・いや、別に深い意味は無いんですけどね。

落下中のポーズが完全にTIMのゴルゴ松本である。死に際まで一発ギャグを忘れない、生粋のエンターテイナー魂。

「炎」

・・・・。

TACTICS // パラシュートの罠

しかしこの鳥人間→ 、見たところ風船男と違って風船を1つしかぶら下げてませんね。

ですからたった一回風船を割ってしまえば、風船男の勝利となるに違い有りません。

「何だそれなら余裕じゃん」

・・と思った貴方は甘い。

何と彼等「鳥人間」は標準装備でパラシュートを隠し持っており、「備え有れば憂いなし」を余裕で実行してきます。

たかが風船1個のザコだと思いきや、まさかのパラシュート完備。一見マヌケに見えて、実は徹底的なリスクヘッジを行っている高度な知能犯である。

しかし

何気にやらしいぞ!

鼻垂れすぎ

一瞬にして垂れパンダ化しました。
相当風船を割られたのがショックだったのでしょうか・・・。

物理的なダメージというよりは、もはや「アイデンティティの全喪失」である。

何気にやらしいぞ!

情けは無用

しかし落下傘状態になった哀愁漂う鳥人間に情けを掛けていては、この様に再び風船を膨らませて大空に羽ばたいてしまいますので、風船を割ったら素早くパラシュートも破壊しましょう。

情けは無用

非武装で降下中の敵兵をパラシュートごと撃ち落とす。ジュネーヴ条約違反ギリギリの非人道的な行為だが、バルーンファイトの世界ではこれがジャスティスである。

HAZARDS // 大自然からの殺意

・・・と
なにやら池から出てきて落ちた鳥人間を食っちまいましたね・・・。

実はこのゲーム「バルーンファイト」では何も風船男の命を狙っているのは鳥人間だけでは有りません。

低空飛行は命掛け・・・

見すると何の変哲も無い様に思われる池になんと人食いナマズが生息しています。

鳥人間も風船男も彼にとってはただの『空飛ぶ宅配便』に過ぎない。

勿論池に落ちてしまうと、鳥人間だろうと風船男だろうと食われます。

「でも池に落ちなければ大丈夫じゃん・・・」

などと一瞬でも思った貴方は腑菓子並に甘い!

そしてあっさり残酷エンド

低空飛行は命掛け・・・

なんとこの卑しきナマズは獲物が池に近づいただけでもジャンプして食っちまいます。

そしてあっさり残酷エンド

空高く飛べば鳥人間に割られ、低く飛べばナマズの餌食になる。上と下からのプレッシャーでプレイヤーの精神を削り取る、任天堂の悪魔的なレベルデザイン。

しかし更にナマズだけでは留まらず

雷

プレイ中、夜空ではが乱れ飛んだり

雷の直撃を受け、ドリフ状態に

雷の直撃を受け、ドリフ状態に

志村けんへのリスペクトも忘れない、律儀な風船男。

謎のダンベルトラップ

謎のダンベルトラップ

意味不明なトラップが仕掛けられていたり。

という具合にゲームとは直接関係の無い者の攻撃が過半数を占める空間の中で、かなり白熱したサバイバルゲームが展開されます。

鳥人間、ナマズ、雷、謎の星(ダンベル)。プレイヤーの命を狙う要素が多すぎる。もはや風船を割るというより、大自然の殺意をいかに回避するかという「サバイバルホラー」である。

FRIENDSHIP // そして裏切りへ

そしてこのゲームの醍醐味は何と言っても2人プレイが可能な事です。
ダブル風船男の協力プレイで鳥人間を蹴散らしてやりましょう。

2人で掛かれば鳥人間も瞬殺可能

2人で掛かれば鳥人間も瞬殺可能

しかし・・・
このゲーム「バルーンファイト」に置いては「2人協力プレイ」という言葉は、例えばマラソン大会等でよく耳にする

「俺と一緒に走ろうな!」

並に裏切られる言葉だという事を覚えておきましょう。

誤って相手の風船を割った瞬間、壮絶な一騎打ちに

誤って相手の風船を割った瞬間、壮絶な一騎打ちに

『ちょっと当たっちゃったゴメンネ』が通用しない世界。一度でも味方の風船を割ろうものなら、そこから先は血で血を洗う修羅の道である。鳥人間そっちのけで友人と殺し合う、醜き人間の本性。

友人を失っても良いと言う人は是非2人プレイで遊ぶべし!

EPILOGUE // 任天堂の罠

ちなみにこのゲームには一様裏技なる物が存在しますが、
死亡する確率が高いのでやめといた方が無難です。

全く役に立たない裏技

全く役に立たない裏技

「池の底で散歩ができる」という、全人類が待ち望んでいなかった究極のライフハック。0.1秒の操作ミスが即座にナマズの腹の中である。ハイリスク・ノーリターンの見本。

任天堂、これ系の裏技多いね・・・。

── 完(残機:0) ──