neomusha

ゲームとテックを、ぶった斬る。

スペースハリアー

── 1985年、SEGAが放った衝撃 ──

PROLOGUE // SEGA体感ゲームの夜明け

1985年、突如現れたゲームに誰もが驚愕しました。

何故なら今までに我々がプレイしてきたゲームとはすべてにおいて一線を画していたからです。

実際と同じ大きさのバイクに跨り、画面中のライダーを操るというこれまでには無い操作性。さらに実際に走っているかのような奥行きのある背景、全てが衝撃的でした・・・。

スペースハリアー(1985年 SEGA アーケード)

そのゲームの名とは

ハングオン

ハングオン(1985年 SEGA アーケード)

SEGA体感ゲーム第一弾の登場です。

さらにその4ヵ月後、SEGAは新たな体感ゲームを世に送り出しました。

超高速3Dスクロールに当時としては驚異的な32000色のグラフィック、そして一度聞いたら忘れられない美しいサウンド。
あのメインテーマを脳内再生できなかった人は、おそらくこの記事を読む資格がない。

それがSEGA体感ゲーム第二弾──

スペースハリアー

スペースハリアー(1985年 SEGA アーケード)

スペースハリアー(1985年 SEGA アーケード)

何故かガンダムのドムらしきキャラが居ます。

しかもこのキャラの名前は 「ドム」
「ドム風」ではなく「ドム」。パロディという逃げ道すら自ら塞ぐ、怒涛の直球ネーミングである。当時のセガ開発陣においては、著作権法よりもプレイヤーへのサービス精神が上位法として機能していたらしい。

THE HERO // 異次元超能力戦士

このゲームの主人公は「異次元超能力戦士」という何やら意味不明な肩書きを持つ男、ハリアーさんです。

ハリアーさん

ハリアーさん

一心不乱に走ってますね。

実はハリアーさん、ゲーム中一度も止まりません
って言うか止まれません。

全18ステージをノンストップで走り抜けます。振り向きさえしてくれません。
彼が疲れないのは超能力のおかげではない。筐体に『止まるボタン』が存在しないのだ。これはゲームの仕様を装った、悪質な強制労働である。

さすが「異次元超能力戦士」。どうやら彼等の体には乳酸が溜まる事は無いようです。
彼が超越しているのは乳酸閾値ではなく、間違いなく労働基準法だ。

しかし、そんなハードボイルド系戦士ハリアーさんも人の子です。
自分だけのプライベートタイムだって当然あります。

そしてその時こそ唯一ハリアーさんの素顔を拝める瞬間でもあるのです。

今回、ハリアーさんの普段の様子を捕えた貴重な映像を入手しました。

ハリアーさんの素顔

ハリアーさんの素顔

ハリアーさん、陽気に手を振っていますね。
ゲーム中は戦闘マシーンの様な彼も、どうやら普段は明るい好青年のようですね。
殺戮マシーンとしての顔と、地元では気のいい兄ちゃんとしての顔。このオンとオフの切り替えの早さは、間違いなくサイコパスのそれである。

ARSENAL // 武装についての考察

このハリアーさん、自分のことを「異次元超能力戦士」などと謳ってますが何故か超能力で敵を倒す事は一切ありません。

彼が敵を倒すの為に使う物とは、超能力とはほぼ正反対の力「科学力」が作り出した武器── バズーカ砲です。
自分の超能力を全く信用していない。厳密に言えば彼は『異次元物理攻撃戦士』である。

超能力と科学力のコラボレーション

超能力と科学力のコラボレーション

ちなみにこのバズーカ砲、このようなエネルギー弾 を連射できるというかなり使える武器なのです。

しかも装弾数は無限という特典付き。
どうやらこの国の科学力はかなり進んでいるようですね。
無限の弾薬。完全にパラレルワールドの軍事バランスを崩壊させている。現実の防衛省が見たら発狂するチート性能だ。

それなのにハリアーさんは何故、「異次元超能力戦士」などと名乗るのか?

普通に空飛んでますね彼。
なるほど、超能力ってソレか。だったら大人しく『異次元飛行戦士』と名乗ればいいものを、なぜわざわざハードルを上げたがるのか。

STAGE 01 // 幻想への第一歩

さあ、ハリアーの戦いのスタートです。

始まって速効、彼は舞空術を使って空中に移動。
やはり走るの は疲れて嫌の様ですね彼。
「走るより飛んだ方が楽」。この極めて原始的かつ本質的な真理に、彼は開始3秒で到達した。これこそが異次元の知性である。

STAGE 02 // 漂う筋肉

おやおや?何やら奥の方に、顔が浮かんでますね。

拡大 ×6

拡大 ×6

あんた怖すぎ

恐ろしいくらいマッチョな顔立ちですね。
もし体もあれば当然マッチョだったんでしょうねこいつ。
顔面のみで確実な威圧感を放つ圧倒的ビジュアル。ボディビルの大会なら、顔の筋肉だけで余裕の予選通過である。

ですから彼等が顔だけだったのはむしろ幸運でした。
なぜなら──

※想像図

※想像図

こんなのが襲ってきた日にゃハリアーさん、きっと昇天するでしょうからね。
ゲームデザイナーが体を付けなかった本当の理由。それはマシンスペックの限界ではなく、間違いなくプレイヤーの精神衛生に対する最大限の配慮だ。感謝すべきである。

STAGE 03

何故かキノコが生えてます。

でもキノコを取ってもスーパーハリアーにはなれません。
さすがの「異次元超能力戦士」も彼 には敵わないようです。
同じキノコを使っても、赤い帽子の配管工は巨大化し、超能力戦士はただ激突して痛がるだけ。特権階級と一般労働者の残酷な格差社会がここにある。

キノコにぶつかるハリアー

「あうちっ!!」

キノコにぶつかるハリアー。
最先端の科学兵器を手にした超能力戦士が、道端のキノコに負けた瞬間である。履歴書には絶対に書けない痛恨の黒歴史だ。

STAGE 04

何故か最後で「ドム」さんが大量に出てきます。

どうやらこの国では「ドム」さんが大量生産されているみたいですね。
本家ジオン公国に許可を取っている形跡は一切ない。そもそも異次元空間に、知的財産権というみみっちい概念が存在するはずもないのだ。

STAGE 05

突然、かわいい(?)顔をした珍獣が現れ、ハリアーさんを背中に乗せます。

そして何を思ったのか
ハリアーさんはこの珍獣と共に木をなぎ倒し始めます

証拠写真

証拠写真

あんた目的忘れて何遊んでんだ?
5ステージも休まず戦い抜いた男の精神は、既に限界に達していたのかもしれない。謎の生命体に跨り、大自然を無表情で破壊し尽くす。現代なら環境保護団体から秒で訴訟を起こされる極悪非道なエコテロリズムだ。

STAGE 06

新たな敵戦闘機出現

新たな敵戦闘機出現

拡大 ×4

拡大 ×4

何気にかわいいぞ!
アザラシみたいな顔をした戦闘機。兵器としての威圧感は地球上のどの乗り物よりも皆無だが、サンリオショップでの商品価値は極めて高い。設計思想が完全にトチ狂っている。

STAGE 07

何故かマンモス出現。

超能力戦士、バズーカ砲、ドム、巨大キノコ、アザラシ戦闘機、そしてマンモス。もはや時空や生態系の概念がゲロのように泥沼化している。このゲームの世界観をシラフで説明できる人間がいれば、私はすぐさま精神科への受診を勧めるだろう。

STAGE 08

序盤から「マッチョ顔」が大量に出現。

それもそのはず、実はこのステージのボスが「マッチョ顔」の親玉だからです。

親玉出現

親玉出現

さすが親玉。岩を盾にして完全武装で登場です。

でもね、岩が剥がれると──

ただのアンパンマン(頭部)です
岩の装甲が剥がれ落ちた中から現れたのは、まさかの国民的ヒーロー(頭部のみ)。「顔が濡れると力が出ない」という致命的な弱点を、重装甲の岩を被るという力技で克服したのだろうか。製菓業と採石業の悪魔合体。もはや愛と勇気ではなく、暴力と狂気だけが友達である。

ジャム親父「さあ、アンパンマン新しい顔だよ」

ジャム親父「さあ、アンパンマン新しい顔だよ」

だからと言ってこんな事されても困りますけどね・・・
顔面を丸ごと投擲して換装するという、生命倫理を完全に置き去りにした狂気のバックアップ機能。絵本の中では心温まる友情の証だが、実戦に投入されるとただの猟奇的ホラーでしかない。

STAGE 09

最後で「モノクロ風ドム」がポーズを決めて終わりです。
ドムのくせに、ご丁寧にウルトラマンのスペシウム光線のポーズで静止している。もはやパロディのパロディ。著作権の概念が三重に崩壊している奇跡の一枚だ。

STAGE 10

このステージのボスです。

正直に告白しよう。このボスに関しては言うべきことが何一つ見つからない。彼の最大の特徴は『特徴がない』ことだ。圧倒的存在感の無さにおいて、彼は異次元の頂点に立っている。

STAGE 11

このステージは初っ端から「ドム」の来襲があります。
って言うか「ドム」しか出てきません。

赤、青、緑、灰といった色とりどりの「ドム」が画面上を埋め尽くします。

まさに 「ドムのドムによるドムだけのステージ」
ドムファン垂涎のステージ。だが冷静に考えれば、色違いの同一キャラで1ステージを水増しするのは、開発チームの『もう新しいドットを打つ余力が1ミリも残っていない』という悲痛なダイイングメッセージである。

STAGE 12

また何か壊してますよこの珍獣。
しかも今度は建造物をなぎ倒しています

どうやらハリアーさん、5ステージほど制圧したらこの様な破壊行為に走るがあるようです。
5ステージ周期で発症する定期的な破壊衝動。大自然の次は建造物だ。この男のストレス解消法は、テロリストのそれと完全に一致している。

STAGE 13

ハリアーやられてますね。

ここまで来ると、敵の攻撃も激しさを増してきます。
特に赤ドムがウザいです。
赤い彗星ならぬ、赤いドム。通常の3倍ウザい。もはや本家のシャアに対する冒涜レベルに達している。

STAGE 14

このステージのボスも「マッチョ顔の親玉」同様舎弟を引き連れ完全武装してますね。

クラゲを引き連れてるということは差し詰めクラゲの親玉か?

拡大 ×4

拡大 ×4

しかし親玉にしては何て酷いマヌケズラでしょうか。
どう見ても部下のクラゲの方が知能指数が高そうに見える。組織における『なぜコイツが上司なのかわからない現象』が、異次元空間にも存在しているとは驚きだ。

STAGE 15

このステージのボスです。
って何でガイコツなの

『異次元超能力戦士 vs 空飛ぶ巨大ガイコツ』。こんな酔っ払いの妄言みたいな対戦カードを会議で通した当時のセガの企画力には、ただただ平伏すしかない。

STAGE 16

奥に居る「ドム」を見て下さい。
合体してます

最終的には合体して相手を倒す某ヒーロー戦隊達の真似でしょうか。
ドム達もついに『合体ロボ』という日本特有の禁断の戦術に手を出した。パクリの玉手箱である。法務部が見たら間違いなく泡を吹いて倒れる案件だ。

THE FINAL BATTLE

STAGE 17

一応彼がラスボスの様です。
どう見ても彼の方が「異次元超能力戦士」に見えます。

全身からオーラ出してますしね。
狛犬である。ついに異次元空間に和風テイストが乱入してきた。和洋折衷を通り越し、もはや世界観の闇鍋状態である。

ちなみにこのラスボス、ある程度攻撃を受けると怒ります

怒るラスボス

怒るラスボス

こいつの頭部付近にあるモヤが、オーラなのか薄毛隠しの渾身のヘアセットなのか個人的に知りたい。
この疑問は四半世紀経った今でも未解決事件として処理され迷宮入り確定である。

ラスボス「さて、どっちが正解かな?」

STAGE 18

ステージ18では以前に倒したはずのボス達が何故か復活して出てきます。
倒したはずの敵が全員蘇る、お馴染みの『ボスラッシュ』。これは異次元の神秘などではない。間違いなく『もう新しいグラフィックを描く容量も時間も無い』という大人の事情の権化である。

でも、ここまで来れた人なら楽勝ですね。

最後の敵

最後の敵

全てのボスを倒すとエンディングが始まります。

破壊王登場

破壊王登場

この後、ハリアーさんは珍獣「破壊王」に乗って遥か彼方に去って行くのでした。
全18ステージの過酷な労働を終え、英雄は『破壊衝動の権化』に乗って何処かへ消え去った。世界を救った男が、狂気の象徴と共犯関係を結んで終わる。なんてダウナーな映画のラストシーンだろうか。

おしまい

おしまい

EPILOGUE // 物損の真実

ふう、勢いに乗って全ステージ解説してしまいました。
疲れた・・・しかしハリアーさんは18ステージ走り続けても疲れない。私は彼の爪の垢を煎じて飲みたい。

ところでこのゲーム最強の敵は誰だかご存知ですか?

それはドムでも各ステージのボスでもラスボスでもありません。
勿論、珍獣「破壊王」というオチでは無いです。

なぜならスペハリ最強の敵とは──

なのですから・・・。

超スピードで進むハリアーさんにとってはただの柱も立派な敵になっちまうんですね・・・。
異次元超能力戦士。巨大ロボットを倒し、マンモスを撃退し、ラスボスを殲滅した男が、最終的に柱で死ぬ。

ハリアー、最強の敵に敗れる

ハリアー、最強の敵に敗れる

例えるなら、人類を救うために核兵器を解体した直後、帰り道の階段で派手に転んで命を落とすような、神の悪意を感じるカテゴリー・ミス。光速で駆け抜けた彼の人生の最後に待っていたのは、感動のフィナーレではなく、ただの『物損事故の現場検証』だったのかもしれない。人生とは、たいていそんなものだ。

── 完(物損事故:100%) ──