PROLOGUE // 運命の立ち読み
( SFC 1994年2月10日 イマジニア )
このゲームを初めて目にしたのは私が小学生の時だった。
当時の私はスーパーファミコンが発売されてから4年近くが経ち、徐々にゲームへの関心も薄れてきた時分だった為か、生意気にもその時期のゲームにはあまり期待していなかった事を覚えている。
しかしながら子供心に「なんかこう…主人公の視点から見たようなリアルなゲームは出ねーかなぁ…」などという微かな期待を持っていたのも事実だった。
そんな微妙な時期に、母に連れられて来たデパートの本屋で偶然出会ったのがこのゲーム「ウルフェンシュタイン3D」。それはまさにドンピシャなタイミングだった。
当時のチビッコ達にとっての愛読書は「ファミコン通信(現ファミ通)」であり、「親に隠れてこっそり読みたい雑誌ランキング」第1位に輝いたのもエロ本を抜いてファミ通であった時代。勿論私も例外ではない。いつものように条件反射のようにページをめくる自分。そして、今作の記事が目に留まった瞬間の衝撃は今でも覚えている。
今見ると当時でもドットが粗く見えるであろうゲーム画面、そしてひたすら不気味なキャラ達。しかしそのような不の要因は、当時の私にとってはまるで意味を成さない物だった。
とにもかくにも「主人公視点のゲーム」が出たという事実が、パソゲーの存在を知ろうはずが無かった当時の私にとっては衝撃的であり驚きだった。
その後すぐさまおもちゃ屋に直行し、なけなしの貯金でこのゲームをゲットしたのは言うまでもない。それからというもの、学校から帰ってきたら毎日一回はこのゲームをプレイしていたのを覚えている。それ程ハマっていたのだ。
そう、あの名作「DOOM」を知るまでは…
HISTORY // 革命はドットとともに
このゲーム「ウルフェンシュタイン3D」は『id Software』というメーカーが開発したパソコンゲームのSFC移植作品です、後にこのメーカーは「DOOM」というゲームで世界的に有名になりましたね。
FPSの名を轟かせた名作「DOOM」
因みにFPSとは「ファースト・パーソン・シューティング」の略で、一人称視点のゲームは皆ひっくるめてこう呼ばれてます。この系統のゲームは海外ではメジャーですが日本ではまだまだマイナーなのが残念ですね。「DOOM」の他に「HALE-LIFE」というソフトも有名です。
数々の賞を総ナメにしたFPSの傑作「HALE-LIFE」
さて、このゲーム「ウルフェンシュタイン3D」は同名パソゲーのSFC移植作品と言うこともあり、当時としてはそれなりに頑張っているのですが、SFC故の性能の限界かかなりドットが粗いです。
どれ位粗いのかと言うと…
たまに遠方の敵が識別できません
ドットが粗すぎて敵かオブジェか判別不能。もはや『間違い探し』の領域である。
(拡大×10)
時々背景と同化します。
最新技術でも不可能な完全迷彩。すべてはマシンスペックの限界が引き起こした奇跡だ。
それでもそのグリグリ動く高速スクロール画面には当時の私は3D酔いしつつも驚かされました。
そしてこのゲームの内容はというと。
タイトル画面のマッチョな男を見れば安易に想像出来そうですが武器で片っ端から敵を抹殺して行き、各フロアを陣取るボスを倒しつつ見事ラスボスを倒せばゲームクリアというストイックな内容です。
一応ストーリーはこんなんです⇩
主人公は火災事故が起こった軍の重要秘密基地に単独潜入!
基地で開発されていた薬品を事故により吸引してしまい死霊と化してしまった!
兵士及びトラウトマン大佐率いる特殊部隊チームの殲滅及び脱出が今回の作戦である。尚、貴君がもし任務に失敗しても当局は一切関与しないのでそのつもりで…
『 薬物・事故・脱出 』
なんか『突然マッチョな人』のストーリーと被るのですが、主人公は常時マッチョのようなので信頼できそうです。
しかし、このストーリーはSFC版のみのこじ付けストーリーだそうで、オリジナルのストーリーはこんな複雑な話では無かったみたいです。どんなストーリーだったかと言うと…
「ナチスを殲滅せよ!」
・・・だったそうです。
これぞ原点にして頂点。余計なドラマなど不要、不均質なドットの前では無力だ。
あまりにもアレなので変更されたようですね。
THE HERO // 殺戮のスペシャリスト
さあそして今回、軍を一人で壊滅しろという無茶な命令を引き受けたのがこの男!軍を一人で打破できるのはこの男しか居ない!「元コマンドー部隊にして娘思いの退役軍人」主人公の登場です!
「来いよベネット」
・・・ある意味正解ですが、残念ながらあなたではありません
候補その2
セガール拳の創始者
・・・あのぉ
あなたでは強過ぎてゲームになりませんから!
一人で軍隊を沈黙させる『沈黙』の男。彼がいたらゲームは5分で終わる。
素手のみ、しかも二時間足らずで全滅させられてる軍隊を想像すると・・・
むしろ敵が可哀想です。
さあ、気を取り直して本物の主人公に登場してもらいましょう
こいつが今回の主人公です
瞳孔が開いている。これは任務への情熱か、それとも薬品の副作用か。
このゲームは主人公視点のゲームなのでゲーム中は銃を持つ腕と顔面しかその姿を拝めません。
そしてゲーム画面はこんなんです。ちなみにゲーム中の画面下の不気味な顔は主人公の顔面で敵が撃ってきた方向が判るレーダーの役割を担っています。
徐々に『ご臨終』へと近づく演出。当時の子供たちのSAN値を削るには十分だった。
( まだまだ元気 ⇒ やめときゃよかった ⇒ もうあかんて ⇒ ご臨終 )
さあ早速任務開始です!しかし死霊相手に素手で立ち向かう訳にも行きませんので道中手に入る武器の紹介から始めたいと思います。
THE WEAPONS // 虐殺のカタログ
サバイバルナイフ
主人公が初めから所持している武器で弾切れになると強制的にこの武器が所持されます。しかし接近戦のみでしか使えず殺傷力も低いのでゲーム中では全く使えない武器です。
弾丸を失った瞬間に訪れる残酷なまでの無力感。ナイフ一本で基地を脱出しろという鬼畜なデザイン、それがウルフェン流のスパルタ。
ピストル
主人公が最初から所持している武器其の二。当然遠方の敵にも有効でサバイバルナイフより使えるが連射が遅く序盤以外では使えない武器です。
あえてピストルで進むのは、もはや『自分への縛り』以外の何物でもない。
この武器しか持ってない場合は早いとこ他の武器を探しましょう。
マシンガン
連射力もそこそこあり序盤ではそこそこ主力になる武器。フロア内に落ちてるものを拾う以外に特定の敵を倒せば入手可能。しかしレベルが上がってくるとこの連射力では辛いです。
マシンガンを手に入れた瞬間、世界の景色が少し変わる。これがFPSの麻薬性だ。
チェーンガン
このゲームのメインウェポンであり常に装備すべき武器、通称無痛ガン。映画「タームネーター2」でシュワちゃんがぶっ放してたのが有名ですね。連射も早く複数の雑魚に対して威力を発揮し、ボス戦にも有効なナイスな武器。
この武器を手にした瞬間、画面上の敵は全員が単なる弾丸の的に格下げされる。哀れを通り越して、むしろ清々しい。
火炎放射器
火炎放射と謳ってはいるが、デカイ火の玉がそのまま飛んで行ってる武器。一発の威力もチェーンガンより高く、連射もできるので結構使える武器です。
「火炎放射器」と呼ぶことを誰も止めなかったのが謎だが、巨大な火の玉を連射できる事実の前では、細かい名称など問題にならない。
ロケットランチャー
ゲーム中最強の威力を誇る武器。単発だがその威力は凄まじく、ザコ相手だと貫通してしまう。ボス戦では絶大な威力を発揮するので最後まで取っておきたい武器である。
最後まで取っておけと言われても、手に入れた瞬間に使いたくなるのが人情というものだ。ボス戦よりも己との戦いの方が、遥かに難しい。
さあ武器紹介も終わったので早速任務を開始してみましょう。
ゲーム開始直後にまず遭遇するのが死霊化した一般兵士いわゆる雑魚です。お前はほんとに雑魚なのか?」ともっぱら巷で噂の強いのまで一通り揃ってますので、この機会に雑魚紹介もしておきたいと思います。
倒されることを唯一の使命として生きる者たちがいる。目標が明確という意味では、ある意味で人生の先輩かもしれない。
THE ENEMIES // 死霊の軍団
ガードソルジャー
まさに雑魚の代名詞のような雑魚。主人公を発見すると必ず律儀に「STOP!」とほざいてから近寄ってきます。攻撃力も防御力も低いので集団で囲まれない限りはピストルでも対応出来る相手です。こいつを倒せば弾丸が手に入るので弾丸の補充の為にいるような存在。
親切丁寧な警告。彼の義務教育は、死霊になっても活きているらしい。
攻撃はピストルのみ
それでも群れられると厄介。油断は禁物である。
エリートガード
死霊になる前は訓練を受けていたらしいので体力が高いタフな雑魚、装備してるマシンガンは至近距離まで近づいてから撃ってくるので、なるべく近づかれる前に倒しておきたい相手です。
最初にこいつを倒すと必ずマシンガンを落とす
弾丸供給係。いわゆる『歩く弾薬箱』としてのセカンドキャリアを彼は確立した。
オフィサー
体力は低いがそれを補う移動の素早さを持っている戦闘のプロ。左右に振れながら近づいて来るため照準が合せづらく遠くからでも発砲して来る。また、部屋のくぼみで隠れて待ち伏せしている事も多く厄介な相手です。
田代まさし並の隠れ&覗きのテクニック
覗くだけで満足してくれれば話は早いのだが、こちらに銃口まで向けてくるのが唯一の問題点だ。
ミュータント
基地で働いていたシャーブス博士によって造られた戦闘マシン。手にショートソード、胸にチェストガンを装備しているので攻撃力が高い。音を立てずに近づいて来る為、背後を取られない様に注意しよう。
何故か意味不明なポーズで発砲してきます
しかしこの動き・・・
旗信号か?

ちなみにこの動きは旗信号では「応信」と言い、「どうそ、送信して下さい。」という合図になるそうです。
…つまりこういうことです。
「どうぞ応信(反撃)して下さい!(反撃)して下さい!」
南無~
一瞬の閃光とともに、彼は歴史の教科書から抹消された。
ミュータントラッツ
こいつもシャーブス博士によって造られたネズミのミュータントです。主人公を発見するや否や、素早い動きで襲い掛かってきますが、体力は極めて低く直接攻撃しか出来ないので離れて倒せば楽勝です。
ザコ戦の基本は扉を開けて一歩下がってからの機銃掃射。こうすればバックを取られずに済む。
では早速攻略してみましょう。
「扉を開けたら即後退」──これが1994年の生存戦略だった。
STAGE 1-6 // 悪夢の迷宮
レベル1
さあまずは軽く小手調べです、レベル1は3面しかなく、敵もガードソルジャー・エリートガード・ミュータントラッツしか居ないので落ち着いて対処していきましょう。
「落ち着いて」などと言っているが、実際には心拍数が既にレッドゾーンだ。
ボスの居る1-3にあるチェーンガンと残弾数が増えるポケットバックは絶対取っておく事。
索敵システムに巨大熱源! レベル1司令官ハンス・グローシュ出現!

そしてレベル1のボスがハンス・グローシュ。両手にチェーンガンを装備しており攻撃力も半端ではありません。
主人公の姿を捉えると容赦無しに撃ってきます。
対処法としては基本的に「撃っては下がり撃っては下がる」のヒット&アウェイ戦法を使いましょう、これは全てのボスにも当てはまります。
というかこの戦法を使わないとボスには勝てません…
ハンス・グローシュを倒せば鍵を落とすので、その鍵を拾ってさっさとレベル2へと進みましょう。
なんじゃこの顔は!?
散々苦しめてくれたボスの最後がこの顔とは。ドットの解像度とは時に、これほどまでに残酷な真実を暴くものだ。
レベル2
レベル2は4面あり敵の攻撃も若干強くなってきます。オフィサーもこのレベルで多数出てくるので注意しましょう。
そしてボスのいる2-4では必ず最強の武器であるロケットランチャーを取っておく事。
さあロケットランチャーを取ればいよいよボス戦です…
警告! 亡き兄の無念を晴らすべく妹が無差別斉射を開始!
なんとこのレベル2のボスは、レベル1のボスハンス・グローシュの妹です。
ちなみにこの妹
説明書ではこんな容姿ですが
実際こんなんです
兄よりゴツイのはどうなのか…
「おにーちゃ〜ん」
哀れ兄…
説明書の容姿を信じてレベル2に挑んだプレイヤーへの最大の裏切りがここにある。ゲームにおける情報戦の敗北とはこういうことだ。
レベル3
レベル3ではミュータントが初登場し、敵の火力も激しくなってきます。ここまで来ると待ち伏せしてる敵も多いので安易に先へ進まないようにしましょう。
禁忌の迷宮へと侵入。死を司る狂信者と対峙せよ!
そしてこのレベルのボスはミュータントを造ったシャーブス博士との事ですが・・・
生身の禿げ親父が出てきました
生身で完全武装に挑む狂気。これぞ博士のプライドか、あるいは単なる着忘れか。
カトちゃん?
このカトちゃん、一切の防具も装備していない生身にも関わらず、あの完全武装だったグローシュ兄弟よりも体力が高いという奇跡のオヤジでした。爆弾を素手で投げてきやがりますが動きがのろいので落ち着いて対処しましょう。
動きは遅いが体力は超高い。人類が本能的に避けてきた「長期戦のじいさんとの戦い」を、このゲームはさり気なく実装していた。
レベル4
さあ戦いも後半戦に突入です。レベル4では敵の数もさることながらその抜け目のない適配置に苦労させられます。
異常生命反応。規格外の火力を備えた変異体が接近中!

そしてコイツがボス超ミュータント
4本の手にはショートソード、そして胸にチェーンガンを装備しており、その攻撃力は凄まじく、スピードもかなり速いので恐らく全ボス中2番目に強いと思われます。
素早い動きでもたもたしてるとあっという間に追い詰められてしまう、このボスには正確なヒット&アウェイ戦法が必須です。
基本はヒット&アウェイ。これを忘れた者は例外なく即死する。
ヒット&アウェイとは言うが、そもそも近づくこと自体が命がけという事実を、まずは静かに受け入れる必要がある。
レベル5
レベル5は全体的に狭いが敵の数が多いフロアで構成されています。特にボスが居る5-6では雑魚の66体もいるので必ず倒してからボスに挑みましょう。
今や死霊の尖兵。かつての戦友を介錯する時が来た!

さあ、そしてこいつがレベル5のボスロイ・ギッガムです。生前は特殊部隊に所属しており主人公の戦友でもあります。
両腕にはチェーンガン、両肩にはロケットランチャーを装備しており、全ボス中最強の攻撃力を誇るロイ・ギッガム。移動もそれほど遅くないのでこちらもロケットランチャーで攻撃しよう。
チェーンガンをぶっ放しながら血の涙を流しているように見えた。粗いドットが偶然生み出した1994年で最も切ない一枚。生前は隣で戦った男が、今は銃口をこちらに向けている。ゲームとわかっていても、この引き金を引くことを一瞬ためらった少年は、きっと自分だけではなかったはずだ。
レベル6
さあいよいよラストダンジョンです
レベル6は最後の砦だけあってフロアの広さ、敵の数共に今までで最高です。敵の配置もほぼ死角にいることが大半なので注意しましょう。
安易に部屋に突っ込むとあっという間に蜂の巣に…
THE FINAL BATTLE // 鋼鉄の決戦
さあそしていよいよラスボス戦です
緊急警報! 特殊部隊総帥であるあの方が最終兵器を起動!
ラスボスは特殊部隊チームの指揮者であり、戦歴の強者、アドルフ・トラウトマン大佐です。
「話を聞こうかジョン!」
…ではなくて
こいつがラスボスのトラウトマン大佐。
最初はマジンガーZの様な鎧を装着し、チェーンガン4丁を装備しての戦闘です。この時点での彼は動きが遅く、レベル1のボスハンス・グローシュ並に弱いですが・・・

ある程度ダメージを与えると鎧が外れ、物凄いスピードでチェーンガンをぶっ放してきます!
あんた最強です…
先ほど全ボス中最強の攻撃力と紹介したロイ・ギッガムに、そっと謝罪したい。このスピードを見た後では、評価の見直しが必要だ。

トラウトマン大佐第二形態。その移動の速さ故に最強の座を保持している
そして激闘の末ついに主人公勝利!
EPILOGUE // 任務終了、そして──
ちなみにエンディングは敵キャラ紹介のみの寂しいラストでした。
DOOMがあり、HALE-LIFEがあり、そして現代のCall of Dutyがある。今や世界で最も遊ばれるジャンルとなったFPSの、すべての起源が──このゲームだった。あの日デパートの本屋でファミ通を手に取った少年はまだそれを知らない。
── 任務完了 ──